2004年12月26日,世界を震撼させるニュースが飛び込んできた.スマトラ沖で発生したマグニチュード9の巨大地震と,それに伴う想像を絶するような津波災害のニュースである.
古くから人々の生活は自然環境と密接な関係をもち,自然環境の大きく依存してきた.とくに,日本をはじめとする東アジア,東南アジアなどの地域では稲作が行われる沖積平野や海岸平野が生活の場となっていることも多く,これらでは同時に洪水をはじめとする様々な災害の影響を強く受けてきた.なかでも,東南アジアの沖積平野・海岸平野では今日においてもインフラの整備が十分に行われていないところも多く,自然災害に対してきわめて脆弱な環境となっている.このような地域において発生した津波災害に関して,災害の実態やそのメカニズムを明らかにするとともに,自然環境と人間活動との関わりについて検討し,災害の復旧・復興に資することはきわめて意義深い.海津は津波被災地域であるタイのアンダマン海沿岸平野とインドネシアのバンダアチェにおいて2005年1 月,3月,8月,9月の4回にわたって現地調査をおこなってきた.ここに紹介するのは現地の被災状況と調査結果の一部である.成果の一部は,インドネシアで開催された2回の国際会議と日本国内で開催された日本地理学会,日本地形学連合の大会などで報告し,海津編著(2005)でとりまとめられたほか,海津ほか( 2006),Umitsu et al.(2007)などで発表される予定である.



インドネシア国バンダアチェにおける津波の被災状況

アンダマン海沿岸Khao Lak平野、Nam Khem平野における津波の被災状況とタイ国アンダマン海沿岸の津波被災地域概観図


インドネシア国バンダアチェにおける津波の流動(建物の床に残された擦痕と倒れた柱の方向を計測した結果にもとづく)

タイ国ナムケム平野におけるにおける津波の流動を示す痕跡


Nam Khem平野における津波堆積物の分布と津波流動方向


名古屋東部における丘陵の地形改変と切り盛り図(海津, 2004)

SRTMデータによる東海地方の3Dダイヤグラム(左)SRTMデータによるタイ南部HatYai平野のMOS-1画像3Dダイヤグラム(右)
新生代第四紀,とくに後期更新世以降の環境変動史の解明と地形・人間活動との関わりについて検討.最終間氷期および後氷期における堆積物から環境変動を解読するとともに地形発達史を明らかにする.完新世における環境変化・地形変化に関してはボーリング調査などによって採取された沖積層の分析により,堆積環境・古地理・地形発達史を解明し,海水準変動や土砂供給量の変化,洪水の頻度などとの関わりについて検討.


オーストラリアShoalhaven低地の沖積層と堆積環境の変遷 (Umitsu et al. 2001)
人類はその出現以来,自然環境の中で生活し,自然環境に対してさまざまな働きかけをしてきた.とくに,沖積低地や三角州,海岸平野などの極めて地形的に不安定な地域では,人類はさまざまな制約の中で生活し,自然環境に対してさまざまな対応をしてきた.これらの地域における最終氷期以降の人間活動は急激な気候変化や海面上昇の影響を強く受け,さまざまな自然災害との戦いでもあった.近年注目されつつある地球温暖化にともなう海面上昇の影響などグローバルスケールからリージョナルスケールまで,三角州や海岸平野を中心に人間活動と自然環境との関わりについて多面的に検討する.


メコンデルタにおける海面上昇の危機(左上) (1999.12 海津撮影)
ベトナム中部Hue付近の海岸侵食で破壊された家屋(上)(2000.3 海津撮影)
チャオプラヤデルタ(タイ)の海岸侵食で残った電柱(左)(1997.12 海津撮影)