1993年春の中国(名古屋大学地理学教室談話会報所収)

 春休みに中国に行った。中国語を全く話せないので、おじさん、おばさんに囲まれて8日間のパッケージツアーに参加して、上海・蘇州・無錫・南京・北京をまわった。印象はというと…。  街中には、人と自転車が溢れている。自転車は歩道を走ってはいけなくて車道にいっぱい。おまけに信号は全市民の信頼を得るには至っていないらしく、交差点には緊張感が漂う。また夜になってもライトはなし(みんなでつけるとまぶしいからとか、中国の人は目がいいからとか)。だから、バスの運転手さんはホーンを鳴らしっぱなし。こんな喧噪の中ではたまらないと思ったが、いつの間にか慣れてしまった。
 郊外の幹線道路に出ると、車道と歩道との間に自転車用の車線がちゃんと造ってある。そこを颯爽と走っていく自転車を見ていると、中国ならこのまま自転車でどこまでも行けそうだという気がする。普段は仕事場への道も、その気になれば北京まででも行ける自転車社会だからだ。
 蘇州からは、大運河を船で無錫に向かう。運河には水面を這うような運搬船が、ディーゼルエンジンを吹かしながら連なって行く。内水運はまだまだ主役。両岸ではいたるところでマンパワーによる建設工事が進められ、国全体が前進していく力強さを感じる。この船から見る風景はなんとも不思議な異国のものだ。でも、なにか3、40年前の日本は、もしかしたらこんな風だったのではないかしらという気がする。僕がその頃の日本を知っているわけではないけれど、そんなどこか懐かしいような。
 今回は日本語を英語だけで中国を旅行してしまった。いつかまた中国に行ける機会があるならば、その時には中国の人と中国語でほんの少しでも話せたらいいなと思う。(1993年春)